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血液腫瘍ガイドライン

血液腫瘍のガイドラインに関する情報を掲載しています

末梢性 T 細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma:PTCL)

総論

WHO分類(2017)では約30のPTCLおよびNK細胞腫瘍の疾患単位が掲載されている1)。成熟T/NK細胞腫瘍では、世界の各地域間で病型相対頻度が異なることが知られている。International T-Cell Lymphoma Projectとして約1,300例を対象として行われた多国間共同後方視的研究によると、欧米で頻度の高いPTCL病型は頻度が高いものから順に、PTCL、非特定型(PTCL,not otherwise specified:PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma:AITL)、未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma:ALCL)、ALK陽性とALCL、ALK陰性である2)。本項では上述の4病型について取り扱い、わが国で頻度の高い成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)と節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma,nasal type:ENKL)については別項で取り扱う。皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に関しては独自のガイドライン(科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版)3)が作成されている。 PTCLにおける病期分類は、ほかの非ホジキンリンパ腫と同様にLugano分類(2014)が用いられる4)。予後予測モデルとしては国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)が有用であり2)、PTCL-NOSに関してはイタリアの研究グループから提唱された病型特異的予後予測モデルであるPIT(Prognostic Index for PTCL-U)がある。PITでは、年齢>60歳、performance status(PS)>1、血清LDH値>施設基準値上限、骨髄浸潤陽性の4つが予後不良因子として規定されている5)
PTCLに対する効果判定としては、positron emission tomography(PET)を組み込んだ規準がLugano分類(2014)に含まれている4)

補足:International T-Cell Lymphoma Projectにおいて全T/NK細胞腫瘍に占める頻度が5%未満と報告された稀なPTCL病型として、腸管症関連T細胞リンパ腫(enteropathy-associated T-cell lymphoma:EATL)、肝脾T細胞リンパ腫(hepatosplenic T-cell lymphoma:HSTL)、原発性皮膚ALCL、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫が挙げられる2)。EATLはCeliac病の頻度の高い欧州では全悪性リンパ腫の9.1%を占め、北米でも5.8%を占めるもののアジアでは1.9%と頻度が低い6)。WHO分類(2017)では、Celiac病との関連がなく従来type Ⅱとされていたものがmonomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma(MEITL)として分離された1)。HSTLは細胞傷害性T細胞、通常はγδ型T細胞に由来する腫瘍で、若年男性に多く、著明な肝脾腫を特徴とする1)。EATL、HSTLともにCHOP(類似)療法による予後は不良であり、病型特異的治療は未確立である。その他の2病型は皮膚/皮下組織を主な病変部位とするリンパ腫である。

 

参考文献

1)Swerdlow SH, et al. eds. Mature T- and NK-cell neoplasms. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2017 : pp345-422. (テキストブック)
2)Vose J, et al. International peripheral T-cell and natural killer/T-cell lymphoma study : pathology findings and clinical outcomes. J Clin Oncol. 2008 ; 26 (25) : 4124-30. 
3)科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版.日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編,金原出版,東京,2015. (ガイドライン)
4)Cheson BD, et al. Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma : the Lugano classification. J Clin Oncol. 2014 ; 32 (27) : 3059-68.
5)Gallamini A, et al. Peripheral T-cell lymphoma unspecified (PTCL-U) : a new prognostic model from a retrospective multicentric clinical study. Blood. 2004 ; 103 (7) : 2474-9. 
6)Delabie J, et al. Enteropathy-associated T-cell lymphoma : clinical and histological findings from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project. Blood. 2011 ; 118 (1) : 148-55.

 

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(p266-267)(金原出版)

 

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PTCL(本項では総論で指定した4病型について取り扱う)は無治療で月単位の病勢進行を示すアグレッシブ リンパ腫(中悪性度リンパ腫)に分類され、リツキシマブ(R)導入以前は、アグレッシブ リンパ腫の約80%を占めるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)とともに病態研究と治療開発がなされ、PTCLの標準治療は他のアグレッシブ リンパ腫と同様とみなされてきた。
R導入以前にREAL分類の臨床的有用性の評価を試みた国際共同後方視的研究において、ALCLを除く全PTCLの予後がDLBCLより不良であることが指摘された1)。また、主にCHOP(類似)療法が実施された患者集団におけるPTCL病型間の予後比較において、PTCL-NOSとAITLの予後はほぼ同様であり、ALCLのうちALK陽性例の予後が良好であることが判明した2)。以上の背景から、現在では、ALK陽性ALCLとそれ以外のPTCLとの2群に分けて治療方針が決定されている。
ALK陽性ALCLでは、DLBCLに匹敵する治療成績が得られているCHOP療法[限局期ではinvolved-field radiotherapy(IFRT)を追加]が推奨される。PTCL-NOS、AITL、ALK陰性ALCLにおいても、治療実績が最も多く報告されているCHOP療法などの多剤併用化学療法が推奨される。ただしその治療効果は不十分であり、標準治療レジメンは確定しておらず、臨床試験への参加が推奨される。初発進行期PTCLの初回完全奏効(CR)例における自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)追加の意義は不明であり、一般診療として行うことは推奨されず、臨床試験として実施することが望ましい。初回治療後部分奏効(PR)以下の場合の治療選択に関するエビデンスは乏しく、現在新規化学療法レジメン、新規治療薬、HDC/AHSCT、同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation:allo-HSCT)の臨床試験が進行中である。
再発・難治性PTCLの救援療法としては他のアグレッシブ リンパ腫に対するものと同様の多剤併用救援化学療法のほか、再発または難治性のCD30陽性ALCLでは抗CD30抗体薬物複合体であるブレンツキシマブ ベドチンも選択肢として挙げられる3)

 

参考文献

1)A clinical evaluation of the International Lymphoma Study Group classification of non-Hodgkin’s lymphoma. The Non-Hodgkin’s Lymphoma Classification Project. Blood. 1997 ; 89 (11) : 3909-18. 
2)Savage KJ, et al. ALK- anaplastic large-cell lymphoma is clinically and immunophenotypically different from both ALK+ALCL and peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified : report from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project. Blood. 2008 ; 111 (12) : 5496-504. 
3)Pro B, et al. Five-year results of brentuximab vedotin in patients with relapsed or refractory systemic anaplastic large cell lymphoma. Blood. 2017 ; 130 (25) : 2709-17. 

 

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(p268-269)(金原出版)

 

節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type:ENKL)

 

総論

WHO分類(2017)ではNK細胞腫瘍として、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type:ENKL)、アグレッシブNK細胞白血病(aggressive NK-cell leukemia:ANKL)、慢性NK細胞増多症(chronic lymphoproliferative disorders of NK cells:CLPD-NK)の3病型が記載されている1)。いずれも稀少病型であり、ANKLの頻度はENKLの7分の1以下であるため2)、治療法に関するエビデンスは乏しい。このため本項ではENKLについてのみ取り扱う。
ENKLのほとんどはNK細胞由来であり、鼻腔およびその周辺(以下本項では鼻腔周辺と記載)原発例においてT細胞由来のリンパ腫が少数存在するとされている。パラフィン材料を用いた現在の病理組織学的手法ではNK細胞型とT細胞型の鑑別ができないため、NK/Tとの用語が採用されている。NK細胞型とT細胞型の識別はフローサイトメトリーあるいはT細胞受容体再構成の遺伝子解析で可能であるため、鼻腔周辺以外の原発例およびANKLでは十分な検体が採取可能であるため識別可能なことが多い。鼻腔周辺原発例ではCD56発現に加えてEBウイルスの存在や細胞傷害性分子の存在で他のPTCLとの鑑別を行っているのが現状である。
病期分類には、ほかの悪性リンパ腫と同様にLugano分類が用いられる。日本および韓国から予後予測モデルがそれぞれ提唱されている2-4)。他のリンパ腫と異なり診断時年齢は予後因子とならない。臨床病期は治療法の選択に重要である。治療効果の判定に際しては、特に鼻腔周辺は解剖学的に複雑であること、腫瘍が消失しても粘膜肥厚などの非腫瘍組織の残存があり得ること、ENKLではpositron emission tomography(PET)において高率に18fluoro-2-deoxyglucose(FDG)の取り込みが認められることから5)、FDG-PETが有用である。

 

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(p287)(金原出版)

 

参考文献

1)Chan JKC, et al. Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2017 : pp368-71. (テキストブック)
2)Suzuki R, et al. Prognostic factors for mature natural killer (NK)-cell neoplasms : aggressive NK-cell leukemia and extranodal NK-cell lymphoma, nasal-type. Ann Oncol. 2010 ; 21 (5) : 1032-40. 
3)Lee J, et al. Extranodal natural killer T-cell lymphoma, nasal-type : a prognostic model from a retrospective multicenter study. J Clin Oncol. 2006 ; 24 (4) : 612-8. 
4)Kim SJ, et al. A prognostic index for natural killer cell lymphoma after non-anthracycline-based treatment : a multicentre, retrospective analysis. Lancet Oncol. 2016 ; 17 (3) : 389-400. 
5)Kako S, et al. FDG-PET in T-cell and NK-cell neoplasms. Ann Oncol. 2007 ; 18 (10) : 1685-90.

 

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節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型アルゴリズム

 

ENKLでは約7割の患者が鼻腔あるいはその周辺組織を中心とする限局期病変を有する。鼻腔周辺原発例で病変が頸部リンパ節までにとどまっている患者では、わが国で実施された第Ⅰ/Ⅱ相試験の結果から同時化学放射線療法であるRT-2/3DeVIC療法(DEX,ETP,IFM,CBDCA)を行うことが推奨され、また臨床試験への参加も勧められる。RT-2/3DeVIC療法で完全奏効(CR)を得た場合、地固め療法としての自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplanta,tion:HDC/AHSCT)を行うことは推奨されない。
鼻腔周辺原発で病変が頸部リンパ節を超えて広がっている場合、鼻腔など上気道以外での発生例、初回治療後再発または部分奏効(PR)以下のENKLに対しては、第Ⅱ相試験の結果からSMILE療法(DEX,MTX,IFM,L-Asp,ETP)を行うことが推奨される。
初発進行期ENKLの全例および初回再発/治療抵抗性ENKLで救援療法後CR例では、現時点では前方視的臨床試験が存在しないため、エビデンスレベルは低いものの、移植後長期奏効を得ている患者が存在することから、年齢や全身状態などの問題がなければ、自家または同種移植が推奨される。救援療法によるPR以下のENKLの予後は不良であり、年齢や全身状態などの問題がなければ、自家または同種造血幹細胞移植が推奨される。

 

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(p288)(金原出版)

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