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アネレム®投与中/投与終了後の確認事項

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アネレム®投与中の確認事項

 

患者の監視と記録


アネレム®投与に際しては、消化器内視鏡診療時の鎮静における患者管理に熟練した医師が、本剤の薬理作用を正しく理解し、患者の鎮静レベル及び全身状態を注意深く継続して管理することが重要です。また、内視鏡検査/処置を行う医師(内視鏡施行医)とは別に、意識状態、呼吸状態、循環動態等の全身状態の観察に専念できる医療従事者をおいて、厳重にモニタリングを行います。

実臨床において、以下に示すケースに該当する際には、アネレム単独の鎮静時よりも循環動態及び呼吸状態に関する有害事象の発現リスクが高まるおそれがあるため、十分に注意してください。

  • アネレムを鎮痛薬若しくは他の鎮静薬と併用する場合
  • アネレムから他の鎮静薬へ切り替える場合
     

 

アネレム®投与中の監視項目

アネレム®投与による鎮静中は、血圧、脈拍数、心電図、心拍数、パルスオキシメータによる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2値)、呼気終末二酸化炭素濃度等を連続的にモニタリングし、定期的(少なくとも5分ごと)に確認・記録します。呼吸数は、少なくとも5分ごとに胸部の動きを確認して測定します。
心電図や呼気終末二酸化炭素濃度は、患者の状態や内視鏡検査/処置の内容に応じて測定するようにしてください。SpO2は、高二酸化炭素血症でも高値に保たれることがあるため、カプノメータによる呼気終末二酸化炭素濃度の監視が、低換気状態の検出には有用です。
また鎮静レベルについても定期的(原則として5分ごと)に確認します。鎮静レベルの評価方法については「鎮静レベルの評価」をご確認ください。

*:アネレム®による鎮静時間が比較的長いと考えられる内視鏡処置の場合には、モニター心電計やカプノメータの使用を推奨いたします。

鎮静レベルの評価

鎮静レベルの適切な評価は、鎮静剤を投与する際の必須要件です。
鎮静を行うときには、患者の全身状態や予定手技等を勘案した上で、その患者にとって最適な目標鎮静レベルを定めます。アネレム®の初回投与後、必要に応じて目標鎮静レベルに到達するまでアネレム®を追加投与します。また目標鎮静レベルに到達したことを確認し、内視鏡検査/処置を開始した後は、定期的な観察を行い、至適鎮静レベルを維持するように必要に応じて追加投与を検討します。
鎮静レベルの評価に用いるスコアには、『Ramsay鎮静スコア』1)等がありますが、ここでは『Modified Observer’s Assessment of Alertness / Sedation scale(MOAA/Sスコア)』についてご紹介します。

 

Modified Observer’s Assessment of Alertness / Sedation scale(MOAA/S)スコア2)

MOAA/Sスコアは、臨床試験(国内臨床試験成績(REM-IICT-JP01試験及びREM-IICT-JP02試験)参照)において使用された鎮静スコアです。

<MOAA/Sスコア評価方法>
・ 患者の名前を普通の口調で1~2回呼びかける。
・ 反応がない場合、大声で、呼びかけを繰り返す。
・ 大声での呼びかけにも反応がない場合、軽くつつくか、体を揺すってみる。
・ 軽い刺激にも反応がない場合、僧帽筋を強くつねってみる。

DA Chernik, et al. J Clin Psychopharmacol. 1990; 10(4): 244-251より作成

至適鎮静レベルの維持

至適鎮静レベルを維持するためには、アネレム®投与開始から内視鏡検査/処置の終了後に患者の意識レベルが回復するまでの間、一定間隔で鎮静レベルを評価することが重要です。これにより鎮静レベルが深すぎたり浅すぎたりしたときにも、迅速かつ適切な措置を行うことができます。
内視鏡検査/処置中の至適鎮静レベルは、意識下鎮静に相当する鎮静レベル(MOAA/Sスコアの場合3~4)です(「MOAA/Sスコア」参照)。これよりも深い鎮静レベル(MOAA/Sスコアの場合1~2)においては、循環器系及び呼吸器系への影響が大きくなることがあるため、アネレム®の追加投与は行わず、特に慎重に患者を観察する必要があります。

 

<補足説明>
長期間ベンゾジアゼピン系薬剤を常用した患者においてアネレム®を「全身麻酔の導入及び維持」の目的で投与した際に、十分な麻酔効果が得られなかったとの報告3)があります。どの程度の期間、ベンゾジアゼピン系薬剤を常用した場合に耐性が生じるのか、詳細な研究はありません。ベンゾジアゼピン系薬剤を常用している患者の場合にはご注意ください。

内視鏡検査時の鎮静管理

一般的に、内視鏡検査の場合、患者はスコープを挿入する際に最も苦痛を感じます。そのため、スコープ挿入が完了するまでは意識下鎮静に相当する鎮静レベル(MOAA/Sスコアの場合3~4)である必要があります。スコープ挿入完了後は、患者の状態や検査の進行状況等を考慮しながら、追加投与の必要性をご検討ください。

内視鏡処置時の鎮静管理

侵襲を伴う内視鏡処置の場合、スコープ挿入時からスコープ抜去後まで意識下鎮静に相当する鎮静レベル(MOAA/Sスコアの場合3~4)を保持する必要があります。よって、覚醒兆候が認められる場合は、速やかにアネレム®の追加投与をご検討ください。
 

7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
<消化器内視鏡診療時の鎮静>
7.5  消化器内視鏡開始前に本剤を総投与量として8mgを投与しても十分な鎮静効果が得られない場合は、本剤投与の中止を検討すること。

アネレム®投与終了後のケアと覚醒の確認

消化器内視鏡検査/処置が終了すれば、鎮静は不要となりますが、アネレム®の消失半減期は約50分間(健康成人)です4)。したがって、検査及び処置終了時の患者には鎮静の効果が残存している可能性があります。
鎮静の終了とは、十分に覚醒し、鎮静前の状態に近づき、日常生活に戻ることができる状態であるとされています5)。回復を待つ間は鎮静中と同じ対応が必要であり、安全な状態であることを確認したあとに、病室への帰室や帰宅を可能とします。

<留意事項>
本剤の影響が完全に消失するまでは、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に注意すること。(電子添文「重要な基本的注意」より抜粋)

 

アネレム®投与終了後の患者の監視項目

アネレム®投与終了後も、患者がアネレム®投与の影響から回復するまで、血圧、脈拍数等のアネレム®投与中のモニタリング項目について連続的、定期的にモニタリングし、少なくとも5分ごとに確認・記録します。また、鎮静レベル・意識レベルを15分ごとを目安に評価し、安全に患者が内視鏡室から退室できるように留意します。

*:「帰宅もしくは一般病室への移動の基準」を満たしているか、Aldreteスコア等の基準を用いて確認する。

帰宅もしくは一般病室への移動の基準

帰宅もしくは一般病室への移動が可能かどうかを判断するためには、施設ごとに基準を作成し、記録に残しておくことが重要です。
帰宅もしくは一般病室への移動の際は、少なくとも以下の条件をすべて満たしていることが必要です。また、外来患者の場合は、帰宅後、患者に異常が発生した際の連絡方法についても必ず確認してください。

① バイタルサインに異常を認めない(鎮静前の値に戻っている)。
② 意識状態が鎮静前の状態に戻っている。
③ 努力呼吸や異常呼吸音を認めず、呼吸状態が安定している。
④ 酸素投与や吸引等の処置を必要としない。
⑤( 年齢等の患者の状態に応じて)介助なしで座位を保持できる。
⑥( 年齢等の患者の状態に応じて)自力歩行が可能である。

 

 

 Aldreteスコアを用いた患者の評価 

代表的な鎮静後の覚醒評価に用いられるスコアとしてAldreteスコアを用いる評価を行うことも有用です6)。 
鎮静後の覚醒評価に用いられるスコアで、呼吸状態、酸素飽和度(SpO2)、意識状態、循環動態、活動度の5項目からなり、合計した総スコアを求めます。9点以上で退出可能基準を満たしているとされています。

9点以上であれば、退出可能な基準を満たしている

日本消化器内視鏡学会内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン委員会編. 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版).
日本消化器内視鏡学会雑誌. 2020; 62(9): 1635-1681.より引用

なお、このAldreteスコアは、臨床試験(国内臨床試験成績(REM-IICT-JP02試験)参照)において使用
された鎮静スコアです。

拮抗薬(フルマゼニル)を使用した場合について

アネレム®の投与終了後、鎮静作用は時間とともに消失していくため、呼吸循環に問題がなければ自然回復を待ってください。万が一、拮抗薬であるフルマゼニルの使用が必要となった場合(「呼吸抑制、低酸素症とその対処法」参照)、再鎮静等のリスクがあることも考慮し、患者の経過観察をしてください。

 

本剤を健康成人男性に各用量(0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5mg/kg)を1分間かけて投与した際の薬物動態を3-コンパートメントモデルにより解析7)

T1/2α:分布相(rapid)、T1/2β:分布相(slow)、T1/2γ:排泄相


1)Ramsay MA, et al. BrMed J 1974; 2(5920):  656-659.
2)DA Chernik, et al. J Clin Psychopharmacol. 1990; 10(4): 244-251.
3)Yoshikawa H, et al. A A Pract. 2021; 15(5): e01460.
4)社内資料:国内第Ⅰ相臨床試験(ONO-2745-01試験、承認時評価資料)
5)公益社団法人日本麻酔科学会編. 安全な鎮静のためのプラクティカルガイド. 2022年6月改訂
6)日本消化器内視鏡学会内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン委員会編. 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版). 日本消化器内視鏡学会雑誌. 2020; 62(9)
7)社内資料:国内第Ⅰ相臨床試験(ONO-2745-01試験、承認時評価資料)