消化器内視鏡検査時の鎮静

国内臨床試験成績
本臨床試験は用量検討試験が含まれるため、一部承認外用量の成績が含まれていますが、承認時評価資料のため紹介します。
消化器内視鏡検査を受ける日本人患者を対象とした試験(REM-IICT-JP01試験:国内第Ⅱ/Ⅲ相医師主導臨床試験)1)
1)社内資料:国内第Ⅱ/Ⅲ相医師主導臨床試験(REM-IICT-JP01試験、承認時評価資料)
目的
鎮痛薬を併用せずに消化器内視鏡検査(上部消化管及び大腸)を受ける日本人患者を対象に、用量探索ステップではアネレム®の至適用量(初回投与量及び追加投与量)を検討し、検証ステップでは用量探索ステップで決定した用量におけるアネレム®の有効性及び安全性を評価した。
試験デザイン
用量探索ステップ:単施設、非盲検、非対照試験
検証ステップ:多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、群間比較試験
対象
鎮痛薬を併用せず上部消化管及び大腸の消化器内視鏡検査を受ける成人患者
用量探索ステップ:40例(コホート1:20例、コホート2:20例、コホート3:0例)
検証ステップ:99例(アネレム®群77例、プラセボ群22例)*1
有効性解析対象集団 FAS:99例(アネレム®群77例、プラセボ群22例)
安全性解析対象集団 99例(アネレム®群76例、プラセボ群23例)
*1: アネレム®群に割り付けられた患者1例にプラセボが投与されていた。有効性解析ではアネレム®群に含めることとし、安全性解析ではプラセボ群に含めることとした。
方法
用量探索ステップ
3つの用量コホートを設け、各コホートに、上部消化管内視鏡検査及び大腸内視鏡検査を受ける患者を同数ずつ登録した。コホート1から開始し、効果安全性評価委員会が次コホートへの移行の可否、検証ステップへの移行の可否、及び検証ステップで用いるアネレム®の用量について総合的に判断した。
用量探索ステップにおける投与方法
初回投与としてアネレム®を15秒以上の時間をかけて緩徐に単回静脈内投与した。初回投与開始時点から2分以上の間隔を空けてMOAA/Sスコアにて鎮静レベルを評価し、鎮静(MOAA/Sスコア4以下)が得られた場合は、消化器内視鏡検査を開始した。内視鏡検査開始前後は必要に応じて1回アネレム®1mgずつ追加投与した。

主な選択基準
・ 20~74歳
・ ASA分類Ⅰ~Ⅱ
・ 体重45~70kg、BMI<30kg/㎡
*2:追加投与の上限は5回までとした。
*3: 内視鏡検査開始後に覚醒徴候(MOAA/Sスコア5や体動等)が認められ、治験責任/分担医師が追加投与を必要と判断した場合は、アネレム®の追加投与を可とした。
検証ステップ
上部消化管内視鏡検査及び大腸内視鏡検査を受ける患者を同数ずつ登録し、それぞれアネレム®群とプラセボ群に4:1の割合で無作為に割り付けた。
検証ステップにおける投与方法
初回投与としてアネレム®3mgを15秒以上の時間をかけて緩徐に単回静脈内投与した*4。
初回投与開始時点から2分以上の間隔を空けてMOAA/Sスコアにて鎮静レベルを評価し、鎮静(MOAA/Sスコア4 以下)が得られた場合は、消化器内視鏡検査を開始した。内視鏡検査開始後は必要に応じて1回アネレム®1mgずつ追加投与した。

*2:追加投与の上限は5回までとした。
*3: 内視鏡検査開始後に覚醒徴候(MOAA/Sスコア5や体動等)が認められ、治験責任/分担医師が追加投与を必要と判断した場合は、アネレム®の追加投与を可とした。
*4:75歳以上の高齢者又は45kg 未満の低体重者はアネレム®の投与量を半量に減量可とした。
【評価項目】
〈主要評価項目〉
消化器内視鏡検査における鎮静の成功割合(検証ステップ)(検証的な解析項目)
消化器内視鏡検査における鎮静の成功の定義
以下のすべてを満たす場合に成功とする。
●内視鏡検査開始前に鎮静(MOAA/Sスコア4以下)が得られる
●消化器内視鏡検査の完遂
● 内視鏡検査開始後の追加投与の回数が上部消化管内視鏡検査では6分間当たり2回、大腸内視鏡検査では15分間当たり5回を超えない
〈副次評価項目〉
内視鏡検査開始前に鎮静が得られた患者の割合、アネレム®の初回投与から鎮静が得られるまでの時間、鎮静が得られるまでのアネレム®の投与量(内視鏡検査開始までの総投与量)、アネレム®/プラセボ最終投与後から歩行できるまでの時間、内視鏡検査終了から歩行できるまでの時間 等
〈安全性評価項目〉
有害事象、臨床検査(血液学的検査、血液生化学検査及び尿検査)、バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数、SpO2)、心電図検査(12誘導心電図、モニター心電図)、投与部位血管痛の有無、覚醒後の再鎮静の有無(フルマゼニル投与例の再鎮静の有無を含む)、意識消失、酸素投与、用手換気、緊急的なフルマゼニルの投与、フルマゼニル投与例における再鎮静、内視鏡医以外の医師による緊急対応の有無
【解析計画】
有効性評価項目における主な解析対象集団はFASとした。
〈主要評価項目〉
消化器内視鏡検査における鎮静について、成功割合及び両側95%CIを算出した。検証ステップでは、アネレム®群とプラセボ群の群間差及び両側95%CIを算出し、Fisherの直接確率検定により優越性を検証した。
〈副次評価項目〉
基本統計量、患者割合や両側95%CI等を算出した。内視鏡検査開始前に鎮静が得られた患者の割合は成功割合及び両側95%CIを算出し、群間差をFisherの直接確率検定により比較した。鎮静が得られるまでのアネレム®の投与量(内視鏡検査開始までの総投与量)は基本統計量を算出し、Wilcoxonの順位和検定により群間比較を行った。アネレム®の初回投与から鎮静が得られるまでの時間、アネレム®/プラセボ最終投与後から歩行できるまでの時間、内視鏡検査終了から歩行できるまでの時間は、Kaplan-Meier曲線を作成して推定し、Log-rank検定により比較した。
〈安全性評価項目〉
安全性評価項目は安全性解析対象集団でステップごとに解析を行った。
有害事象、臨床検査、バイタルサイン、心電図検査、投与部位血管痛の有無、覚醒の評価、意識消失、酸素投与、用手換気、緊急的なフルマゼニルの投与、フルマゼニル投与例における再鎮静、内視鏡医以外の医師による緊急対応の有無について集計することは事前に規定されていた。
患者背景
安全性解析対象集団における患者背景は以下のとおりでした。


用量探索ステップにおけるコホート移行の目安の判定結果
コホート2の用量(初回投与量3mg、追加投与量1mg/回)において有効性が認められ、忍容性に問題がないことが確認されました。

*1:次コホートへ移行する目安への該当性
有効性
消化器内視鏡検査における鎮静の成功割合[主要評価項目、FAS](検証的な解析結果)
検証ステップにおいて、消化器内視鏡検査における鎮静の成功割合は、アネレム®群で93.5%(95%CI:85.5,97.9%)、プラセボ群で4.5%(95%CI:0.1, 22.8%)であり、群間差は89.0%(95%CI:68.7, 94.6%)でした。全体、上部消化管及び大腸のいずれにおいても、プラセボ群と比較してアネレム®群の成功割合が有意に高いことが示されました(それぞれp<0.0001、Fisherの直接確率検定)。

*2:Fisherの直接確率検定
*3:名目上のp値、Fisherの直接確率検定
内視鏡検査開始前に鎮静が得られた患者の割合[副次評価項目、FAS]
検証ステップにおいて、内視鏡検査開始前に鎮静が得られた患者の割合は、上部消化管ではアネレム®群91.9%(95%CI:78.1, 98.3%)、プラセボ群9.1%(95%CI:0.2, 41.3%)であり、群間差は82.8%(95%CI:47.1, 94.2%)でした。大腸では、アネレム®群97.5%(95%CI:86.8, 99.9%)、プラセボ群0%(95%CI:0.0, 28.5%)であり、群間差は97.5%(95%CI:63.4%, 計算不可)でした。上部消化管及び大腸のいずれにおいてもプラセボ群と比較してアネレム®群の成功割合が有意に高いことが示されました(それぞれp<0.0001、名目上のp値、Fisherの直接確率検定)。
アネレム®の初回投与から鎮静が得られるまでの時間[副次評価項目、FAS]
検証ステップにおいて、アネレム®の初回投与から鎮静が得られるまでの時間の中央値は、上部消化管では、アネレム®群2.0分(95%CI:2.0, 4.0分)でした。大腸では、アネレム®群2.1分(95%CI:2.0, 4.0分)でした。
鎮静が得られるまでのアネレム®の投与量(内視鏡検査開始までの総投与量)[副次評価項目、FAS]
検証ステップにおいて、鎮静が得られるまでのアネレム®の投与量の中央値は、上部消化管では、3.00mg(2.0~8.0mg)でした。大腸では、3.00mg(3.0~8.0mg)でした。
アネレム®/プラセボ最終投与後から歩行できるまでの時間[副次評価項目、FAS]
検証ステップにおいて、アネレム®/プラセボ最終投与後から歩行できるまでの時間の中央値は、上部消化管では、アネレム®群9.0分(95%CI:8.0, 12.0分)、プラセボ群で8.0分(95%CI:7.5, 9.0分)、大腸では、アネレム®群10.5分(95%CI:7.0, 14.0分)、プラセボ群15.0分(95%CI:12.0, 21.0分)でした。上部消化管及び大腸のいずれにおいても有意な差は認められませんでした(Log-rank検定)。
内視鏡検査終了から歩行できるまでの時間[副次評価項目、FAS]
検証ステップにおいて、内視鏡検査終了から歩行できるまでの時間の中央値は、上部消化管では、アネレム®群5.0分(95%CI:0.0, 5.0分)、プラセボ群0.0分、大腸ではアネレム®群5.0分(95%CI:0.0, 6.0分)、プラセボ群0.0分でした。上部消化管では有意な差は認められませんでしたが(Log-rank検定)、大腸ではプラセボ群と比較してアネレム®群の時間が有意に長いことが示されました(p=0.0483、名目上のp値、Log-rank検定)。
■ 副次評価項目結果のまとめ

*4:上部消化管 n=34、大腸 n=39
*5:1例のみのデータのため記載せず
安全性
副作用[安全性評価項目、安全性解析対象集団]
用量探索ステップにおいて、コホート1の安全性解析対象集団20例のうち副作用発現率は10.0%(2/20例)であり、主な副作用は浮動性めまい5.0%(1/20例)、頭痛5.0%(1/20例)でした。コホート2の安全性解析対象集団20例のうち副作用発現率は15.0%(3/20例)であり、主な副作用は腹痛5.0%(1/20例)、心窩部不快感5.0%(1/20例)、倦怠感5.0%(1/20例)でした。
検証ステップにおいて、安全性解析対象集団99例のうち副作用発現率は、アネレム®群で18.4%(14/76例)、プラセボ群で0.0%でした。主な副作用はアネレム®群で傾眠9.2%(7/76例)、倦怠感3.9%(3/76例)、頭部不快感、低血圧、頭痛各2.6%(2/76例)でした。
試験の中止に至った有害事象は、検証ステップにおいてプラセボ群の大腸内視鏡検査を受けた患者1例に1件(疼痛)認められました。
本試験において、重篤な有害事象、死亡は認められませんでした。
■ 主な副作用


集計に用いた用語はMedDRA v24.1に準じた。
臨床検査値、バイタルサイン、心電図検査の評価
試験期間を通して、臨床検査に関わる有害事象は認められませんでした。低血圧がアネレム®群の2例(いずれも検証ステップで上部消化管内視鏡検査を受けた患者)に認められました。心拍数、呼吸数及びSpO2に臨床的に意義のある変動は認められませんでした。ベースライン時から内視鏡検査終了60分後までの心電図において、臨床的に意義のある変動は認められませんでした。
その他の安全性評価項目
試験期間を通して、投与部位血管痛は認められませんでした。
覚醒後の再鎮静及びふらつき、転倒、意識消失は認められませんでした。用手換気が実施された患者はいませんでした。
また、緊急的にフルマゼニルを投与された患者はおらず、内視鏡医以外の医師による緊急対応を受けた患者も認められませんでした。
6.用法及び用量(抜粋)
〈消化器内視鏡診療時の鎮静〉
通常、成人には、レミマゾラムとして3mgを、15秒以上かけて静脈内投与する。効果が不十分な場合は、少なくとも2分以上の間隔を空けて、1mgずつ15秒以上かけて静脈内投与する。なお、患者の年齢、体重等を考慮し、適切な鎮静深度が得られるよう、投与量を適宜減量する。
1)社内資料:国内第Ⅱ/Ⅲ相医師主導臨床試験(REM-IICT-JP01試験、承認時評価資料)